top of page

山の課題

山は毎日、少しずつ荒れていきます。

 

排水不全で土砂崩れが発生したり、倒木で道が通れなくなったり、獣が苗を食い荒らしたり。火の不始末で火災がおきたり、ゴミの不法投棄で水が汚れたりと、人による課題もあります。

日本の山の課題を弊社山林を通して知っていただきたく、ここではその一部を紹介していきます。

不採算性

~課題への対応力低下~

山がかかえる様々な課題を紹介していくと書きましたが、もっとも根本的に解決しなければならない課題は「不採算性」です。​

山には色々な関わり方がありますが、例えば山主として山を所有した場合、立木を業者へ100万円/haで売れるといい方です(これは長年よく管理され、幅広の搬出道に接し、まとまった面積を有する林地に限ります)。

50年伐期とした場合、1年間で1ha(100m×100m)が稼ぎだす収益は2万円。これに最低限、固定資産税がかかります(普通林の場合、数千円/ha)。伐採後に植林して草刈りや間伐を行いますが、鹿対策の費用がかさみ、補助金でまかなえない部分は手出しです。

 

みずから原木を伐採・搬出すれば採算性はあがるのではと思われるかもしれませんが、現在の材価で利益を出すには一度に大量の原木を伐採・搬出しなければなりません。これにはヒト(経験豊富な人)、モノ(多くの重機)、カネ(資金力)が必要で、これらを一からそろえるのは現実的に不可能です。

この状況で山主として合理的な判断の一つは、山に手をかけないことです。なにかに取り組めばお金がかかります。日々、山を見に行くだけでも時間とガソリン代がかかります。補助金で下草刈りと間伐だけ行い、後は伐期がくるまで放っておく。とても合理的な山林経営の一判断です。

ただし放っておくと、下で紹介する課題が発生した場合も対処されず、問題はますますその規模を大きくしていきます。以下で、山で常日頃発生する問題を紹介していきます。

スクリーンショット 2025-03-21 185712.png

排水管理

全国の土砂災害現場を調査しておりますが、各現場で共通するのは大雨が降っている事です。そもそも物理的に不安定な山の斜面に大量の水が流れればくずれるのは当たり前ですが、山に水がたまりつづければ土砂崩れはより発生しやすくなります。よって、排水管理はとても重要です。

ただ排水路を作ってもそれを維持することは大変です。下は林内をはしる当社林道のU字溝が法面からの小さな土砂崩れで埋まってしまった写真です。

heohLDORQpKAIaX3FpuM7w.jpg

和歌山県はよく台風が来て雨がたくさん降ります。U字溝は大量の水を一気に排水できるすぐれた設備ですが、このように埋まったまま放置してしまうと、大量の雨が道にあふれて反対の路肩を削り、道を落としてしまいます。

山には他にも多くの排水路が敷設されていますが、敷設したものの適切に管理されていないものも多く、それが土砂災害にむすびついたケースもあります。残念ながら人命が失われてしまったケースがあるのも事実です。

ただ、上のような小さな土砂崩れでも、元の状態に戻すには一人工(一人で一日)はかかります。排水管理はとても大切ですが、時間も労力もかかります。

​清掃後のU字溝

育 林

​~50年間、苦労を背負いこみます~

杉や桧が市場で販売できる太さに成長するまで、最低50年の期間を要します。この50年間、植えれば何もしなくてよいわけではなく、雑草に負けないよう下草刈りし、通直完満(つうちょくかんまん/幹が真っすぐで先細りが少ない)な木だけ残るよう間伐します。

ただ、それ以外にも様々な課題が苗に降りかかります。その最たるものが獣害と自然災害です。ここでは獣害を紹介しますが、中でも鹿による被害は深刻で苗を植えれば食べられ、立木は角研ぎで傷つけられます。

そこで鹿が植林地に入れないよう柵を張りますが、この管理も大変です。網を下からはねあげて出入りしていないか定期的に確認します。一方、周辺木が倒れて柵がこわれ、鹿が植林地に出入り自由になることもよくあります。下は当社植林地の鹿柵が松の倒木で壊れた事例です。

qoI62LHDQBqRrsa0tx8yTQ.jpg

根本が腐っておりました。原因は調査中です。

-3iKrSTtS2ih-gjCJPWwXA (1).jpg

​多くの苗が倒木の下敷きに

チェンソーや補修具をかついで復旧に行きますが、これも一日仕事です。なお近くに同じような松の枯れた大木があり、こちらもいつの日か必ず倒れてきます。育林とは50年間、苦労を背負いこむ事を意味します。

鹿柵の復旧後

山林火災とゴミ

さて自然と獣でお腹一杯ですが、これに人による課題が加わります。ここでは山に致命的な影響を与える山林火災と頻繁に発生するゴミ問題を紹介します。

まず山林火災ですが、林野火災の原因のトップはたき火で約30%を占めます。火災が発生すると、50年育ててきた木が一瞬でなくなり、またその範囲は周辺の山林すべてに拡がります。​また火の不始末は現場でも発生します。エンジン式のチェンソーや刈払機はガソリンを燃料とするため、現場でたばこで一服して火災というケースは毎年かならず発生しています。

oyKRL76FRsa6ZbrRxiuG-Q (2).jpg

たき火の跡
(当社林道沿い)

次に紹介するのはゴミ問題です。火災ほど致命的ではありませんが、山に捨てられたゴミは水を汚し、獣を呼び寄せます。なにより自分のゴミは自分の家で捨ててくれというのが山林所有者の正直な思いです。

xACo7innQ5qwY662YhI_Ag.jpg

​空き缶、空き瓶、ペットボトル、消火器、ポリタンク、肥料、タイヤ、バンパー、なんでも捨てていきます

なお改めてになりますが、山では毎日課題が発生するため、多少の事は目くじら立てません。ですが、火の不始末だけは勘弁いただきたいです。

山と都市

~水を通じてつながっています~

長々書いてきましたが、上の通り、山では日々様々な課題が発生しています。一方、都市にお住いの方はそもそも物理的な距離が遠いため、山の課題と言われてもピンと来られないかもしれません。ただ水を通じてかならず山と都市はつながっており、山が健全である事は都市にとっても重要です。
 

きれいな水を作り出す社会インフラである山。そこで日々発生する課題を知って頂きたく、facebookなどで情報発信しておりますので、ぜひご一見ください。

Copyright © 一番隊株式会社 All Rights Reserved.

bottom of page